塩基性と求核性の違い
塩基性とは、プロトンの引き抜きやすさであり、求核性とは、炭素原子へのアタックのしやすさである。求核性が高い試薬は、塩基性も高く、塩基性が高い試薬は求核性も高いという傾向がある。これは、アタックするものがプロトンと炭素原子という違いが有るだけでアタックのしやすさは変わらないためといえる。
しかしながら、塩基性は高いが求核性は低いという試薬がある。これは、立体的な込み具合が大きい試薬の場合、小さなプロトンへの接近に比べ、炭素原子への接近は困難な場合があるためである。この立体的要因により求核性は低下するが、塩基性はあまり変わらないということである。
例えば、下記の反応例をご覧いただきたい。
上の例では、反応剤が求核剤として働き、求核置換反応が起こる。
下の例では、反応剤の求核性が低く塩基性が高いため、プロトンを引き抜く脱離反応が優先する。このため、E2脱離反応が進行しアルケンが生成する。これは、tBuOKが求核性が低いが、塩基性が高いためである。
CH3-CH2-I+EtONa→CH3CH2OEt+NaI
CH3-CH2-I+tBuOK→CH=CH+tBuOH+KI
他に、塩基性が高く求核性が低い試薬としては、LDAが良く知られている。例えば、アルドール反応などを行う場合にLDAが良く用いられる。LDAは、BuLiとジイソプロピルアミンから調整する。塩基性だけならば、BuLiで十分なはずであるが、実際には、LDAを用いる。これは、BuLiが求核性もあるため、BuLiがそのままエステルに求核付加するという副反応があるためである。
参考文献、関連書籍、おすすめの本
中級者、上級者向けの教科書
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(アマゾンのレビューから引用)
この本は、反応機構や矢印が細かく書いてあるために、有機化学を深く勉強しようと言う人に最適だと思います。大学院生で勉強したい人に最適です。
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- 最終更新:2013-05-18 13:06:42